チャイムの音が。

仕事帰りに、本屋とCDショップを覗く。今日はなにも買わず。文春文庫の新刊である高尾慶子「ロンドンの負けない日々」を眺め、山中千尋「アウトサイド・バイ・ザ・スウイング」を手に取っただけ。
前者は、リドリー・スコット家のハウスキーパーを勤めた日本人女性の英国暮らしエッセイ。デビュー作「イギリス人はおかしい」以来、読み続けいているシリーズで、これで何作目だろうか。別にイギリスやイギリス人について新しい知見に触れるということももうないのだが、老後の年金や社会保障を顧みない日本に愛想をつかし、どうしようもないほどタガの緩んだ英国でそれでもましと独り頑張る高尾さんの姿と豊かな感情はあるが湿度のない文章に惹かれて読み続けている。別にあせって読むものでもないので、携帯本を忘れた時にでも買って、電車に揺られながら読めればいい。
後者は、良質のジャズピアノトリオのアルバムを製作している澤野商会からデビューした日本人ピアニスト・山中千尋のメジャー・デビューアルバム。スタンダードだけでなくオリジナルも弾き、その魅力ある曲想は、あの寺島靖国氏も太鼓判を押している。小柄でキュートな容貌とも相俟って、ポピュラーな人気を得るかもしれない。
帰宅して、ポストを覗くと、自民党候補者と民主党候補者からハガキが来ている。部屋に入ると留守電のランプが点滅中。再生すると共産党からのお願いが。そのうち、玄関のチャイムが鳴って社民党の福島代表がピンクのスーツで現れるのではないかと少し警戒してしまう。
先日買った『文學界』の「ただ今、翻訳中」に目を通す。今回は「嵐が丘」(新潮文庫)の新訳をした鴻巣友季子さんが書いている。それによると10月に《明治大正期の先人たちの翻訳を読み、その偉大さ、真摯さ、新しさ、豪快さ、ときには素晴らしきちゃらんぽらんさ(?)や遊び心にふれて、驚嘆の念に打たれるという内容》の「明治大正 翻訳ワンダーランド」という本を新潮社から出版するとのこと。新潮社のHPで10月の新刊をチェックしてみるが、この本は載っていない。どうなっているのかな。
とりあえず、出たら読んでみたい本だ。
アウトサイド・バイ・ザ・スウイング



【月刊アン・サリー計画/今日の1曲】

  • The Carpenters「(They Long To Be) Close To You」

最近のカバーアルバムに取り上げられることの多いカーペンターズのバラード。特に何かが目立って素晴らしいというわけではないのだが、シンプルで過不足なく、そして懐かしいけど古びていない曲。アルバムの中にはこういう出しゃばらない小品が必要なのだ。