出張場所が近すぎる。

本日は昼から出張。場所は神田三崎町と神保町のすぐ近く。となれば、なんとか時間を都合してサッとでも古書店街を流さなければならない。なぜと聞かないでいただきたい。こんな場所に出張させる方が悪いのです。
昼食もとらず職場を飛び出したので、まずはキッチン南海のカツカレーで腹ごしらえ。陽気のいいところに熱々のカレーとくれば汗がどっと噴き出す。その汗を拭き拭き、書肆アクセスへ。この店で以下のものを入手。

「市井作家列伝」は堀切直人さんや南陀楼綾繁さんの文章が入った栞付きで、渋いマイナー作家のポルトレ集とくれば、やはりこの店で買いたかった一冊。
『ボブ』は貸本喫茶ちょうちょぼっこタコシェが共同で行っているミニコミイベントのガイドブック。このネーミングがいい。
『海鳴り』は最近注目のPR誌。山田稔さんの文章などが載っている。小振りでシンプルな造りなのだが、中身が詰まっている感じで持ち重りがする。
出席しなければならない会合が始まるまであまり時間がなくなり、いつものコースをザッと回って何も買わずに出張場所へ。以前に来ている場所なのだが、記憶が定かではなく、迷う。そのうち映画「珈琲時光」に出てきた「喫茶エリカ」の前に出る。おお、ここにあったか。入りたいけど入れない。先を急ぐ。なんとか辿り着き、会議に講演会に懇親会と出席し、6:30に仕事終了。
神保町に戻るが、古書店街はもう眠りについている。まだ、外は昼のように明るいのだ。唯一灯がついているのは新刊書店のみ。岩波ブックセンターで1冊。

  • 『みすず』6月号

南陀楼さんが面白くなっていると書いていたので、手に取ってみるとなるほどと思う。田中眞澄「ふるほん行脚」がど真ん中。田中氏の小津安二郎研究は本になっているが、以前『文學界』に連載していた「その場所に文学ありて」はどこかで出版してくれないものだろうか。この美術、映画、文学に関わる展覧会などを周遊する街歩きエッセイを毎号楽しみにしていたのだ。氏はあまり本を出したがらないようなので、気持ちのある編集者の方の頑張りに期待したいのだが。文藝春秋がだめなら、右文書院でどうでしょう。
いつものように日本特価書籍で〆る。川口喬一「昭和初年の『ユリシーズ』」と“理想の教室”シリーズが出ている。ともにみすず書房刊。川口本が面白そう。昭和初年の『ユリシーズ』の翻訳と出版に関わる評論。すぐに読める状態になった時(いつだ?)に買うことにし、今日は見送る。“理想の教室”は買おうと思っていた加藤幹郎ヒッチコック『裏窓』ミステリーの映画学」だけが棚にない。これだけ売れてしまったのだろうか。それらの代わりに竹中労「完本 美空ひばり」(ちくま文庫)、尾辻克彦「父が消えた」(河出文庫)、牧村健一郎「新聞記者 夏目漱石」(平凡社新書)などを買う。僕が店を出た瞬間に店内の照明が消える。棚を眺めているうちに店内は僕だけになっており、どうやら閉店時間を過ぎてしまっていたらしい。なにも買わずに出たら顰蹙ものだった。
帰路の車中は高田理惠子「グロテスクな教養」を読む。庄司薫「赤頭巾ちゃん気をつけて」を教養書として読解するところが面白い。
家のポストに古書現世の目録「逍遥」67号が入っていた。早速「店番日記」を読み、目録をチェックする。