スコーンと一発。

職場でちょっとしたことがあり、鬱屈した気分となる。最近、自己嫌悪傾向にあったところにスコーンと一発もらった感じ。ストレス解消に連日のブックオフ詣でとなった。
105円棚から4冊。

「我的中国」は今年の1月に出たばかりの本。帯付き美本ですぐ眼についた。以前この人の「日本語を書く部屋」を読んで面白かった記憶があり、また今注目の中国への私小説的紀行とあってそそられる。
トットのピクチャー・ブック」は以前に岡崎武志さんが薦めていた本。武井武雄の絵がカラーでふんだんに入っているのがいい。
「達磨の縄跳び」は『オール読物』のリレーエッセイの文庫化第2弾。第1弾の方は単行本で持っている。丸谷才一開高健山口瞳吉行淳之介といったお歴々のエッセイが気軽に読めるのがいい。山田風太郎野口冨士男といった名前がみられるのもうれしい。
「孤高の鬼たち」は作家や家族が書いた有名作家のポルトレ集。山口瞳の描く川端康成吉屋信子の見た宇野千代井伏鱒二の語る弟子・太宰治などなど。個人的には妻・坂口三千代さんによる坂口安吾ポルトレが懐かしい。まだ学生の頃、坂口安吾生誕八〇年記念の会に参加し、まだご存命であった三千代夫人とお話しさせてもらったことを思い出す。カラッとした気持ちのいい方だった。
ブックオフでは思ったほど買うものがなく、今ひとつ気分がぱっとしない。給料日でもあったことだし、新刊書をパアッと買い込むことにする。

新井本は、“イギリス小説と映画から読む「階級」”という副題が付く。英国の小説も映画も興味があるので購入。帯に小谷野敦氏の賛辞が。〈意地悪な階級社会を優しく論じて、新井潤美さんは、いま一番ステキな英国学者である。〉という文章を読みながら、きっと美人なんだろうなと思う。
アン・タイラーは、小林信彦岡崎武志ラインの強烈プッシュで以前から関心を持っていた作家。「ブリージング・レッスン」、「ここがホームシック・レストラン」、「あのころ、私たちはおとなだった」(すべて文春文庫)は既にブックオフで入手済み。「アクシデンタル・ツーリスト」は映画を中古ビデオで手に入れている。きっかけがあればいつでも“アン・タイラー”モードに入る準備はできているのだ。
江藤本は、現在読み進めている「『別れる理由』が気になって」関係本として購入。この続編とも言える「自由と禁忌」は大学時代新刊で買って読んでいるのだが、この評論家の代表作とも言える「成熟と喪失」は未読のままであった。国文学科で近代文学を専攻したものとしてはちょっと恥ずかしいのでこの機会にというわけ。先日買った同じく講談社文芸文庫の「作家は行動する」とともに読んでみたい。
講談社文芸文庫の文芸評論本で思い出したのだが、大学時代に読んだ文芸評論の中で特に印象に残っている本に亀井秀雄「感性の変革」(講談社)がある。当時流行の構造主義記号論と言った舶来の道具を無闇にありがたがることなく、それらを点検した上で、その欠点も指摘しながら有効に活用し、日本の近代小説を読解した読みごたえのある本であった。現在は絶版で、古本屋で見かけることもほとんどない。文芸文庫が発刊した当時、挟み込まれていた編集部宛のハガキに文庫化希望の書名を書く欄があり、何度か「感性の変革」を推して出したのだが、未だに文庫化される気配がない。ホームページをたまに覗くと亀井秀雄さんは今も元気にご活躍の様子である(若手の研究者などに対して遠慮せずに苦言を呈している姿は相変わらずだ)。
講談社文芸文庫のラインナップにとてもはえる1冊だと思うのだが。
不機嫌なメアリー・ポピンズ―イギリス小説と映画から読む「階級」 (平凡社新書)