スムース友の会に行ってきました。

朝、ゆっくりと起きて、遅めの朝食をとり、昼過ぎに神保町へ出る。アンダーグラウンド・ブック・カフェが行われている東京古書会館へ。
昨日の城北展に続いて2日連続であるが、会場の様子は随分違う。棚がゆったりと組まれ、中央にテーブルを置いた展示スペースがあり、音楽が流れている。この“UBC”(勝手に省略させてもらいます)は、以前に「洲之内徹小説全集」(著者署名入り)を手頃な値段で入手することのできた僕にとってはゲンのいい場所なのだ。まず、手に取ったのは作家のフィギアを使った写真作品。以前の“UBC”での展示を見て気に入った〈拳銃片手に気球から垂らされた縄梯子につかまり大空へ昇っていく乱歩〉のスナップを1000円で。職場のデスクマットの中に入れて毎日眺めてニヤリとするのを楽しみに購入を決定。その他4冊を購う。

「ヨーロッパ随筆」は裏の見返しに「高島屋にて 三十年七月二十七日」と女性の名前が書いてある。デパートで本を買うことの高揚感が伝わってくる気がする。山田本はみすず書房版が新刊で手に入るのだが、野見山暁治さんの絵が表紙に入ったこちらがいい。丸谷本は本に関する文章のアンソロジー。野村本は、サンデー毎日の五十年史。この方は「伝記谷崎潤一郎」の著者として記憶していたので、週刊誌との関係がピンとこなかったのだが、毎日新聞社の方だったのですね。
会場をうろうろしていると林哲夫さんと山本善行さんに出会う。何度かお会いしただけなのだが、こちらの顔を覚えてくださっているので恐縮する。2階の「1920−30年代の装丁展」を眺め、「紙魚の手帖」(32号)を求めてから外へ出る。まだ「東京スムース友の会」まで時間があるので、昨日何も買えなかった小宮山書店ガレージセール(コミガレ)を覗いてみる。いきなり生島遼一「水中花」(岩波書店)が目に飛び込んでくる。「こんなの昨日はなかったぞ」と視線を棚のあちこちに走らせると、中島健蔵「雨過天晴の巻 回想の文学5 昭和十七年−二十三年」(平凡社)と「坂口安吾選集第三巻」(東京創元社)の2冊がすぐ見つかる。これで3冊500円。ほんとにコミガレはアタリハズレが激しいのだ。中島健蔵は先日読んだ多川精一「焼跡のグラフィズム」で雑誌『FRONT』に関わった人物として登場していた。安吾本には月報が入っており、木山捷平安吾のどてら」という文章が載っている。木山捷平安吾の取り合わせなんて考えたこともなかったのでこれは新鮮な発見であった。
時間もちょうどよい加減となったので「友の会」会場へ。
本日は総勢37名ということで京都の時よりも規模が大きい。いただいた出席者リストを見るとこれまでブログや本などでお名前だけ知っていた方が多数参加されているので緊張する。金子拓さんや密偵おまささんといったブログでお付き合いさせてただいている方ともご挨拶することができた。また、すれ違いつづけていた古書現世の向井さんともやっとお会いすることができてうれしい限り。
赤貧(山本善行さん)VS均一(岡崎武志さん)の500円以下で買った古本対決で盛り上がる。詳細は同人の方がブログで書かれると思うので省略するが、山本さんが6対4で勝利し、京都の仇を討ったかたち。これで1勝1敗の五分だから、是非もう一度機会を設けていただいて勝敗を決して欲しいものだ。ほんとは白黒はっきりさせたいのではなく、こんな楽しいイベントなら何度でも味わいたという思いなのですが。
オークションでは、聖智文庫さんが出品した『ARE』の中から、未所持の号を3冊競り落とすことができた。これであと欠けているのは7号と10号の2冊となった。聖智文庫さんには揃いがあるとのことであるが、これは気長に1冊ずつ集めていこうと思っている。その他にも聖智文庫さんから僕の探求本に関する情報をいただく。どうやらこのブログをご覧になっているようだ。本業とはいえ、聖智文庫さんの品揃えには感嘆するしかない。
他にも何人かの方からこのブログを覗いているとお声を掛けていただいた。恥ずかしいやら嬉しいやら。
いろいろ楽しく得るところの多いひと時だった。
できれば、この後東京堂書店で行われる「古本道場」出版記念の岡崎さんと角田光代さんとのトークショーを聴きたいところなのだが、職場関係のお通夜が夜にあるので急いで自宅に戻り、着替えてお通夜へ。移動の車中で読みかけだった小林信彦「本音を申せば」を読了する。相変わらず、小林さんのエッセイは、するするとのどごしよく読めてしまう。それでいて頭の中に色々な反響としての言葉や思いが渦巻くことになる。老舗のソバみたいなものか。
帰宅してブログ散歩をすると、「新・読前読後」で偶然にもkanetakuさんが「本音を申せば」を取り上げている。最近の文章に粘りのようなものが欠けてきたのではないかというご意見には同感する。小林氏の言葉を借りれば「枯れてきた」というところだろうか。それでも、「アイドル・2004」のアイドルウオッチャーぶりや「劇場について」で見られる映画「キャットウーマン」でのハル・ベリーを見るためだけに新宿ミラノ座へ出掛けていくその姿にまだ「枯れ」切っていない小林氏の姿を見出してニンマリもしてしまう。