平塚・藤沢

本日は、出張で平塚へ。朝4時半起きで眠い。移動の電車の中でも活字を追うことが困難な状態のため、ipodで音楽を聴く。昨日からシャッフル機能を使うことを覚えた。入れてある曲を勝手に選んで流してくれる機能である。いろいろなジャンルを雑多に詰め込んでいるので、例えば、ビル・エバンス(ジャズ)→グレン・グールド(クラシック)→志ん朝「抜け雀」(落語)→ビエナ・ビスタ・ソシアルクラブ(ワールド)→はっぴえんど(フォーク)→志ん朝鬼平犯科帳」(朗読)→小野リサ(ボサノバ)といった具合。落語や朗読が入ってしまうのが可笑しい。
今日は一日野外での仕事。天気もいいし、暖かいのだけれど、花粉は否応も無く責め立ててくる。鼻水と咳のダブルパンチ。用意してきたマスクもティッシュペーパーも使い切り、コンビニで補充して対応する。
2時間あまり昼休みの時間が取れることになり、平塚駅前に昼食をとりに行く。「えりか」という洋食屋でランチを食べる。ハンバーグを卵焼きで包んだもの。初めて食べた。食事を手早く済ませ、ある店を探して歩き出す。その店とは岡崎武志さんが『彷書月刊』2月号で紹介していた萬葉堂書店である。せっかく平塚まで来たのだから寄らない訳にはいかないでしょう。しかし、駅からすぐと書いてあったという記憶だけで探すため、なかなか見つけられない。そのうち別の古本屋を発見。今風の新古書店的な店構えであるが、中に入ると結構黒っぽい本も置いている。

上記の2冊を持って帳場へ。最初の本は集めている佐野繁次郎装幀本。2番目は世評高きちくま文庫の百話シリーズを持っていないので。店の人に萬葉堂の場所を聞くと丁寧に教えてくれる。
平塚駅の南口の跨線橋出口前にその店はあった(読み直してみたら岡崎さんはちゃんとそう書いてくれていました。すみません)。店頭の均一台を見るだけで本をしっかり選んでいる店であることがわかる。店内に入り、ざっと書棚を見渡す。筋の通ったまっとうな古本屋であることが体にじかに伝わってくる感じ。顔をほころばせながら、棚を眺めていると、店主の方(年配の男性)から声をかけられる。岡崎さんの文章を読んで来た旨を告げると、「最近そういう方が多い」とのこと。古本が余り売れないのは、近年廊下のない家が増え、本の置き場がなくなったためだろうというような話をする。「廊下というものは結構本が置ける場所なんですがねえ」と店主の方。
もっとじっくり話したかったのだが、仕事に戻る時間が迫っているためそうそうに切り上げ本を選ぶ。しかし、焦ってしまって本がなかなか選べない。タイムリミットぎりぎりに見つけたこの2冊。

日垣本は古本屋の新書棚を覗くたびに探していた本。最近何度目かの増刷をしたとのことだが、とんと書店で見かけることがない。どうやらほとんど日垣さん自身が通販で売っているみたいだ。直接注文すれば希望でサインもしてもらえるとのことなのだが、ここで会えたのも何かの縁だと購入。時間の余裕があれば、もっと値の張る単行本を選べたのだろうが、今回は安い文庫と新書で勘弁してもらう。また、寄せてもらいますと挨拶して出張先へ戻る。
出張は夕方6時に終了。数人で横浜方面の電車に乗るが、自分だけ藤沢で途中下車する。この機会に以前から行ってみたいと思っていた聖智文庫に寄るためである。『sumus』の中公文庫特集号でこの店の存在を知り、その中公文庫の品揃えの素晴らしさを是非この目で見てみたいと思っていたのだ。場所は「ミス古書」の地図を見ながらなのですぐに分かった。駅前の繁華街のすぐ近くである。この店も店頭均一がしっかりしている。広瀬正「マイナス・ゼロ」(集英社文庫)、栗本慎一郎「反文学論」(光文社文庫)の2冊を拾ってから店内に。棚と棚との間をゆったりととり、選び抜かれた本が棚に整然と収まっている。品揃えの充実は中公文庫だけではないことは一目瞭然だ。もちろん、中公文庫は人気の絶版ものがズラッと並んでいて壮観。この店に来て中公文庫を買わないわけにはいかない。

  • 濱田泰三(編)「やまとのふみくら」(中公文庫)

を購入。蔵書印ありということで定価とほぼ同じ金額で買えた。その他、3冊ほど。

値段の安い文庫は3冊まとめて200円におまけしてくれる。
聖智文庫のような素敵な店はいつまでも残っていてほしいという思いがあるためなるべく多く本を買って行こうという気持ちになる。自分が古本屋にできることと言えば本を買うことしかないのだから。
明日も休日出張だが、今日はいい古本屋に2軒も行けたので帰りの道も気が重くなかった。