本を買えとごとくに

今日から日常の生活に戻る。
旅行でお金を使ったのでしばらくは本買いも控えなければいけないかなと思っていたところに、会計課から呼び出しが。なんと昨年の夏に行った海外出張で立て替えていた経費が年度末で返ってくると言われる。そうだ、忘れていた。6万余の金額を渡される。自分の金が戻って来ただけなのに、まるで小遣いをもらったようなうれしさ。ああ、また本を買ってしまうな。
仕事帰りに当然のように本屋へ。

en-taxi』は、[大特集]が落語で、[特集]が草森紳一。まず草森さんの方に反応する。僕にとって草森さんは本を読んでいないのに愛読者のつもりになっている作者の一人だ。雑誌に載った文章などはちょこちょこ読んではいるのだが、まだまともに本を1冊も読んでいない。それでも、草森本を古本屋で見つけては買い集めている。その数は10冊に満たないが、掲載されている「『題名お気に入り』の自著30」というリストを見るととりあえずここにあげられている本はすべて手に入れたいと思ってしまう。もちろん、読む気も満々であるのだが、草森本は大冊も多く、「荷風永代橋」は著者自身も言うように枕になりそうなくらいであるから、そう簡単には読み出せないのだ。その点、山口昌男氏とともに僕の中ではいつかは読破してやろう大冊本2大巨頭として存在している(小熊英二氏もそれに加わりそうな勢いであるが)。
それにしても草森さんはその年齢に比していたって枯れようとしない筆力の持ち主だ。掲載されている「ベーコンの永代橋」というエッセイの活字が他の筆者と比べて小さいことがそれを証している。推測するに、編集者が用意した枚数を超える量の原稿が持ち込まれたのではないか。そうでなければ、特集の本人の原稿を一番小さな活字で組む理由が考えられない。
坪内祐三さんによる草森氏への33の質問も素敵だ。「一番最近読まれた日本の現代小説は」という問いに「なし。(二十三歳から、古典以外は基本的に読まなくなっている)」と答えたすぐ後に、岩明均ヒストリエ」2巻までと井上雄彦「リアル」4巻までを最近読んだと答えているのだから。
村上春樹氏の短編小説が昔から好きだ。「象の消滅」は英訳用に特別編集された短編集の逆輸入版。『彷書月刊』4月号で近代ナリコさん(「スムース友の会」に参加されてました)が「春樹ブーム」というエッセイを書いている。村上氏の「納屋を焼く」を読んでそのすばらしさに驚き、これを機会に村上本を読んでみようと思われたそうだ。なんだかんだ言ってもこれだけ長い間第一線で活躍し、世界的にも評価され、出版不況の中で確実に万単位の部数を売り上げる作家で居続けるというのはやはりすごいことだと思う。僕もこの本を通して村上春樹的スモールワールド(短編なので)を再体験し、氏のすごさを味わってみようと思う。
「象の消滅」 短篇選集 1980-1991