パリの4月・ロンドンの5月

3月8日のweb読書手帖を見ると、横浜の古本屋めぐりのことが書いてある。
イセザキモール周辺の古本屋は、僕もよく立ち寄るのでなんだがうれしくなる。
特に、誠文堂は地元に支店があった頃から15年近く通っている店なので、○の評価がまた我が事のようにうれしい。

今日は2時過ぎから横浜への出張があり、夕方には用件が済んだので、1ヵ月ぶりに誠文堂を尋ねた(1月22日を参照)。
奥さん(女性店主)が店番していた。前回は開店早々であったため棚の本もどこか落ち着かなげであったが、今日は店としてのおさまりがついたような印象。小振りだが明るい雰囲気のよい店だ。扱っている分野がサブカルやビジュアル系であればもっと若い客が押し寄せてもいいのだが、人文科学書専門店として名を売ってきた店であるからそうもいかない。しかし、そのため程度のいい文学書や映画関係の本などが手頃な値段で手に入るという利点もある。気になる高価な人文書が出ると、ひと月後くらいにこの店を訪れて割安の値段で手に入れたことが何度もある。今日は文学の棚からこの2冊。

「グラン・モーヌ」はみすずの《大人の本棚》の最新刊。薄い緑色のカバーがいい。それに訳者が長谷川四郎というので新刊で買おうかと思っていた作品。グッド・タイミングである。昨年買ったスティヴンスン・小沼丹(訳)「旅は驢馬をつれて」もそうだが、訳者の名前で買ってしまった。それにしても《大人の本棚》シリーズはいい本を出すので感心する。おかげで積読本が増えてしまうのは困りものだが。
清算を済ませた後で、奥さんといろいろ話をする。最近の古本屋事情についてなど様々なことを1時間以上も。やはり、どこも古本屋の景気はよくないらしい。アマゾンや日本の古本屋といったネットを使った販売もやっているが、店舗との両立や配送業者との問題など簡単ではなく、ネット販売も安直な救世主にはならないようだ。多くの老舗を含めた店が廃業していくという話を聞き、寂しい思いは拭えない。本に出会え、本に触れ、本に埋もれることのできる古本屋という場所がいいのである。この世にネット古書店しかなくなったとすれば、古本にまつわる楽しみは10分の1になってしまうと思う。
話の中に色々な古本屋さんの名前が出てくる。例えば、青山の日月堂、横浜の黄麦堂(「古本屋の女房」の田中栞さんのご主人)、渋谷のフライング・ブックス、鎌倉の游古洞などなど。奥さんは以前に日月堂佐藤真砂さんに教わってパリの蚤の市で古本を買い付けようとしたらしい(残念ながらうまくいかなかったようだが)。そして、今年の5月には古本屋仲間とロンドンに行くとの事で、チヤリングクロスの古書街の場所などを頼まれて紙に描いて説明した。また、ウエールズにある古書の町ヘイ・オン・ワイへも行くとのこと。古本で再生したという過疎の町に是非一度行ってみたいと思っているのでうらやましい。奥さんに電話がかかってきたのを潮に退散する。こういう店は長く続いて欲しい。また、来よう。