今日の音楽

これも超有名盤。マイルスがMJQのジョン・ルイスを除いたメンバーとジョイントしたセッションを中心にしている。ルイスの代わりにピアノを弾いているのがセロニアス・モンクだ。個人的にはモンクのソロピアノアルバムというのがあまり好きではないのだが、こう言ったセッションでは、他の演奏者とのコントラストの妙が面白い。このアルバムはマイルスとモンクが喧嘩したことでも有名であるが、これだけ個性の強い二人が共演し、その不協和音が音楽として成り立ってしまうだから、ジャズという音楽は楽しい。
「バグズ・グルーブ」を初めて聞いたのは、世田谷の下高井戸にあったソープ・オペラというパスタ屋で、ジャズのレコードを流している店であった。僕にジャズの手ほどきをしてくれた大学の先輩に連れて行ってもらったのだが、その時にかかっていたのがこのレコード。気になってレコードジャケットを見に行き、マイルスやモンクにミルト・ジャクソンが参加していることを知る。それに、ジャケットのカッコよさに胸がときめいた。ジャズ初心者であった僕は、まだブルーノートのリード・マイルスによるタイポグラフィーを多用したジャケットデザインを知らなかった。それ以前に、タイポグラフィーのカッコよさを教えたくれたのがこのアルバムだった。
ソープ・オペラはもうない。ソープ・オペラがあった道の少し先にバラード堂という数年前にできた洒落た古本屋がある。たまにその店に行くことがあると、通りがかりにソープ・オペラのあった建物を見上げる。すると、頭にバグズ・グルーブのイントロが聞こえてくるような気がする。

Bags Groove