雑誌棚は築地市場。

今日はこの2冊。

日露戦争物語」は、唯一購読しているコミックス。確かどこかで福田和也氏も同じことを書いていた。とは言っても僕は特に戦記物が好きなわけではない。この漫画を読み始めた時、僕の中では山田風太郎氏の明治物や坪内祐三さんの「慶応三年生まれ七人の旋毛曲り」に連なる作品として認知されたのである。主人公は日露戦争で活躍する秋山真之。彼が帝国大学に入り、正岡子規夏目漱石南方熊楠などと虚実皮膜の交わりをする初期の展開が面白く、いつの間にか最新刊が出るのを待ちわびて買う漫画となっていた。現在物語は、日清戦争に突入し、日本艦隊と清国艦隊による黄海海戦が展開されている。この15巻1冊分で海戦は1時間しか経過していない。それほど細かく戦闘の細部を描き、それに各戦艦を指揮する将校の出自が描き出されていく。その多くが幕末の混迷を駆け抜けてきた薩長の猛者達であり、日清戦争と幕末が非常に近い地続きなのだということを思い知らされる。ただ、このペースで続いていくと10年後の日露戦争に辿り着くまであと何巻必要になるのだろう。ちょっと「ドカベン」や「アストロ球団」を思い出させるスローペースである。

BRUTUS』の特集は“COFFEE AND CIGARETTES”。前半のコーヒー部では、業界人の勧めるコーヒー及びコーヒーの飲める店が70人分紹介されている。この雑誌の書店特集などに見られるこのカタログ図鑑系の物量作戦的展開(?)はいい。なんだか得した気分。また、東京の主だったコーヒーチェーン店のテイクアウトコーヒーの味を比較し、ベスト3を選ぶ試みも手間隙かけている感じが伝わってくる。
後半のタバコ部はタバコが小道具として使われたポスターやレコードのジャケットに映画や漫画などビジュアル面から攻めている。禁煙ファシズムに対するカッコよさからのやんわりとした反撃といったところか。
表紙もシンプルに洒落ていて悪くない。さすがマガジンハウス社と言いたくなる充実感だ。
こういう雑誌の充実度というのは生き物であるから、毎号維持していくのは難しいのだろうと思う。だからこそ、築地市場のように毎日書店の棚で活きや脂ののり具合をチェックしながら買う面白さが雑誌にはあるのだ。