先送り洲之内徹

本日は、風邪気味のため短めに。
昨日の洲之内徹話の続きを少々。
昨年の秋に仙台の宮城県美術館洲之内徹コレクションの展示があり、日曜を使ってそれを見に行った。雨の降り続く1日であったためか、入場者はまばらで、その分ゆっくりと洲之内徹氏が愛し、集めた作品を堪能することができた。コレクションには松本竣介長谷川利行など池袋モンパルナスと呼ばれたアトリエ村に関わった画家のものも多い。そこで、仙台へ向かう新幹線のお供は宇佐美承「池袋モンパルナス」(集英社文庫)であった。
昭和の初年から戦後にかけて幾多の芸術家とそのタマゴたちが集い、さまざまなドラマを演じたトポスに関するルポルタージュである。多くの関係者へのインタビューを元に描き出された芸術家群像は、洲之内徹氏のエッセイを読んでいなければほとんど知らない人間の話で終わってしまうところであったが、「気まぐれ美術館」の入館者となった後では、興味深くよむ事ができた。
日頃、美術館に行く事も、絵画を鑑賞する事もほとんどない人間なのだが、洲之内コレクションだけは飽きることなく味わい尽くす事ができた。
洲之内徹氏のエッセイは以下の7冊がある。

  • 「絵の中の散歩」(新潮社)
  • 「気まぐれ美術館」(新潮社)
  • 「帰りたい風景」(新潮社)
  • セザンヌの塗り残し」(新潮社)
  • 「人魚の見た夢」(新潮社)
  • 「さらば気まぐれ美術館」(新潮社)
  • 「おいてけぼり」(世界文化社

最後の2冊は氏の没後に出されたものである。実は、これまで読んだのは上の3冊と最後の1冊の計4冊だけなのだ。あとの3冊は未読である。ファンを自認しておきながら、なんだといわれそうだが、もはや洲之内エッセイが書かれないことが明らかな今、すべてを読み終えてしまうのを惜しむ気持ちが強いのだ。それに、今読まなくてもいつの日に読んでも面白く楽しく読めるこという確信がある。だから、本が手元に揃っている以上は安心して読書を先送りしていられるのだ。と言いつつ、洲之内徹という名を聞くたびに、ウズウズする気持ちがあるのは偽れない。今年は読み切ってしまおうかという気もある。さてどうしたものか。こんな事を考えている状態が一番楽しい。