流動する日々。


今日は退勤後、帰宅して洗濯。3日から今日までずうっと胃腸の様子を窺いながらウィダーインゼリーなどの流動食しか食べてない。今夜くらいから少しずつ通常の食事に移行しようと考え、まずはお粥からスタート。まあ、これも流動食だが。コンビニで買ってきたお粥のパックを温め、そこに瓶詰のなめ茸を入れ、仕上げに昆布ポン酢をひとたらし。


昨日、黒岩比佐子「『食道楽』の人 村井弦斎」(岩波書店)を読み終えた余勢をかって「柳田泉の文学遺産」(右文書院)第2巻から「村井弦斎『日の出島』について(遺稿)」を読む。この文章は題名にもあるように柳田泉の遺稿で黒岩本にも引用されている。黒岩さんは柳田泉村井弦斎のよき理解者と評価しており、後日「柳田泉の文学遺産」の解説を担当されたのもこの二人の関係からきたものかと想像する。

柳田泉の文学遺産〈第2巻〉

柳田泉の文学遺産〈第2巻〉

 「『食道楽』の人 村井弦斎」は忘れられた明治の大ベストセラー作家・弦斎の初の本格的評伝である。この本がなるにあたって黒岩さんがどれほど多くの資料に目を通したかは、巻末にある膨大な注と主要参考文献一覧を見なくても本文を読めば自ずと読者に伝わるはずだ。興味を惹かれたところや面白かったエピソードなどはあれこれ挙げられるが、字数制限のある携帯からしか日記の更新ができない状況のため一点に絞って感想を述べれば、弦斎は驚異的な筆力で「不如帰」と肩を並べる大ベストセラーを生み出した小説家ではあるが、その本質は編集者・新聞記者・ジャーナリストであったというのがこの評伝の眼目だと思う。彼の最大のベストセラーである「食道楽」も“食育”の重要性を社会に伝えたいという思いによって書かれ、長くレシピ本として重宝される長編小説という特異な作品となったのである。偶然か否かは分からないが黒岩さんの関心が向かう弦斎や独歩は、小説家でありながら編集者としての側面を強く持った人物であるのが興味深い。次に予定されている評伝の対象者である堺利彦もまた編集者であった。この本も是非読みたい。


 それはいつかの楽しみに取って置き、代わりに黒岩比佐子「音のない記憶 ろうあの写真家 井上孝治」(角川文庫)を今夜から読み始める。