雨の茅ヶ崎に煙るホルモン。


 昼前に家を出て横浜駅に向かう。有隣堂に寄り道して久しぶりに刊行された<みすず大人の本棚>シリーズの最新刊である坂本公延「バラはバラの木に咲く」(みすず書房)を購入。この大好きなシリーズも売れ行きが思わしくなく新刊の刊行も難しくなっているらしいと聞いた。存続を望む者としては少しでも売り上げに協力しなくてはならない。

 東海道線に乗って茅ヶ崎まで行く。ここにある市民文化会館で立川談春独演会があるのだ。会場のロビーでNEGIさんと落ち合う。とって貰ったチケットを受け取る。


 その後、木村衣有子さんが合流。木村さんも落語好きである若手落語家を追いかけているとのこと。


 まずは談春さんの弟子である前座が登場し、「子ほめ」をやる。途中急に絶句するというスリリングな高座だった。


 続いて登場した談春さんは円楽師匠のネタでしっかり笑わせておいて「棒鱈」に入る。先ほどの円楽師匠の笑い声を登場人物に使うなど相変わらずしっかり考えられた高座だ。涙が出る程笑わせてくれる。
休憩を挟んで「文七元結」。偶然今朝風呂に入りながら聴いていた談春CDのがこの噺だった。CDとのアレンジの違いを確認しながらじっくりと聴く。談春版の特徴は佐野槌のおかみさんが語るバクチ論と長兵衛が文七に説く「なぜ死んではならないか」という語り。今日もたっぷりやっていた。この理屈っぽさを厭う人もいると思うが僕は嫌いではない。それにしても、口から出る言葉によってこんなにも楽しませてくれるのはさすがである。


 終演後、文化会館近くで木村さんの旦那さんと合流し、4名で茅ヶ崎の街を歩く。旦那さんは開高健の記念館を見てきたとのこと。その時にチェックしたというお店をあれこれ物色して何とも時代のついたホルモン焼きの店に入る。店内には開高健がこの店を紹介したと思われる雑誌記事の切り抜きが貼ってあった(記事をちゃんと読んでいないので憶測だが)。メニューを見ると庶民的な店である。安心してあれこれ頼む。何といっても一番食べたのは店の看板であるホルモン焼き。これが一皿250円で、うまいのだ。何度お代わりしたか覚えていないくらい食べた。次に注文回数が多かったのが生キャベツだったと思う。なんとも安上がりな客であり、店である。


 その店を出て駅近くの魚介類が売りの居酒屋に4人ではしごする。木村さんとNEGIさんは最近どのマンガが面白いかという話をしている。半分以上は僕の知らないものばかり。「のだめカンタービレ」のあっけない終わり方について木村さんと話すのがせいぜいだった。


 お開きになって店を出ると入る前に降り出した雨が弱くなっていた。横浜駅で木村さんたちと別れて帰る。今日話題に出た木村さんの京都本の文庫をまだ買っていないことを思い出し、単行本はもっているがやはり携帯用には文庫が便利という結論に至ったため、明日買いに行くことに決めた(後日ちゃんと買いました)。