バッタと桟橋。


 


 この街の海岸に出る。現地の人に海の中に500メートルほど突き出た桟橋があると聞いたのだ。その桟橋に向かう道の横に続く金網にバッタが数匹止まっているのが見えた。視線を前の道に戻すと、数匹どころの話じゃない、一瞬鳥肌が立つくらいのおびただしい数のバッタが道と言わず金網と言わずうごめいていくではないか。踏みつぶさないようによけながら桟橋にたどりつく。桟橋の上にバッタはいない。ただ海へとまっすぐに伸びる桟橋があるだけだ。500メートル歩いて先端に着く。岸から結構離れた感じでまるで海の真ん中に立っているような錯覚を抱く。

 海岸には犬を散歩させている人の姿が見える。

 足元には悠然とエイが泳いでいた。