冬のアイルランド・夏の茗荷。


 朝、職場の長い階段を5分の3ほど下りたところでバランスを崩し、後は100mのスタートのように前のめりで階段をかけ下る。なんとか階段の上や下のコンクリの床に倒れ込まずに済んだ。もし倒れていたら骨折していたかもしれないな。

 気をつけないとこんなところで階段落ちをしても、階上でその勇姿を称えてくれる銀ちゃんはいないのだから。


 このところ先送りにしていた細々としたこと(これが小山の如く溜まっているのだ)をひとつひとつ切り崩して行く。そのために銀行と郵便局に行かねばならず、自転車に跨がり昼下がりの街に出るとそこは真夏だった。


 汗まみれで戻り、途中で買ったアイスにかぶりつく。


 夕方退勤。


 サブカル系古本屋の100円棚で藤原新也「風のフリュート」(集英社文庫)を買う。冬のアイルランドを撮った写真集。ゴツゴツ・ザラザラとした世界にはほどんど潤いというものを感じないが、そこには肌にまとわりつくようなじめっとした湿度もまた感じない。やはり一度この国に行っておきたいな。


 本屋へ。これが出ていた。

  • 『考える人』2008年夏号

 特集は“小説より奇なり!自伝、評伝、日記を読もう”だ。表紙にズラッと並んだ自伝本、伝記本、日記本にうっとりする。やはり、平野甲賀さんの文字力は強い。


 夕食を食べに入った店で『考える人』を開く。武藤康史さんの中野好夫「蘆花徳冨健次郎」を賞賛するエッセイを読み持っていないこの本を欲しくなり、そう言えば以前には地元のあの古本屋の棚にこれがずうっと置いてあったのだが、この間行った時に見た記憶がないということは………と心は揺れる。
 続いて坪内祐三さんによる山下恒夫「石井研堂」(リブロポート)を褒めたエッセイを読む。この“シリーズ民間日本学者”は蒐集対象としているためこの本は持っている。今度探して手に取ってみよう。
 他にも小谷野敦さんが「日本の作家の自伝・評伝」のオススメ作品を採り上げて解説している(ここでも「蘆花徳冨健次郎」が採り上げられていた。これを機会にちくま文庫に収録してほしいものだ)し、鶴見俊輔さんと高野文子さんとの対談もあってけっこう楽しめそうな1冊。
 次号の予告を観ると“堀江敏幸と歩く パリとその周辺”という特集だとのこと。yomunelさん、どうしましょう。やはりこれは買いですかね。たぶん僕は買ってしまうと思います。


 店で季節の野菜天丼を食べて帰る。茗荷の天ぷらを口に含むとふわぁっと夏の香りが広がり、昼間の暑さと相俟って僕は今夏の中にいるのだと確信する。


 帰宅後、外市に追加する本を数冊見つける。

 こちらを明日の午後直接往来座へ持って行って追加します。