昼食難民の神保町。

半ドンの仕事を終えるとさっさと電車に乗り込んで神保町へ向かう。車中の友は堀江敏幸「回送電車」。徳田秋声「町の踊り場」についての正宗白鳥小沼丹古井由吉が書いた梗概を比べる「梗概について」の正・続が面白い。


 神保町到着。すでに3時近くになっているがまだ昼食を済ませておらず腹ペコだ。さぼうる2でナポリタンをと思ったのだが満席とのこと。それではと丸香に向かうが本日終了の看板が……。今度こそとカフェヒナタ屋に行ってみると入口に鍵がかかっていて“3時××分に戻ります”の紙が……、ああ。


 昼食難民となりし己の体をランチョンへ。吉田健一が愛したというこの店に入るのは初めて。アルコールに弱い方なのでビアホールに1人で入るのにちょっと抵抗があってこれまで足を踏み入れることが無かったのだ。しかし、今日はそんなことを言っていられない。思ったより敷居の高くない店だったのでほっとする。オムライスを食べた。隣りの席のOLと思しき2人の会話が面白い。『プレジデント』の最近の記事が面白くないとしたり顔で言う男のズレ方を笑い、『ゲイナー』自体はダサくない雑誌だが、『ゲイナー』を読んでいる男はダサいと言い切る。さすが神保町のOLさんは出版関係の視点で辛口トークを炸裂させるんですね。



 三省堂の4階へ。もちろん、岡崎武志さんと山本善行さんの特設コーナーが目当てだ。まずは「新・文學入門」を小脇に抱える。やっと我が手に入ったか。特設コーナーにある岡崎さんと山本さんの古本箱をのぞく。岡崎箱から「別冊新評 花田清輝の世界」を、山本箱からは神西清「灰色の眼の女」(中公文庫)を選ぶ。



 続いて東京堂3階へ。畠中さんに挨拶。昨日月曜社のブログでここに置いてあると書いてあった「洲之内徹小説集成」(月曜社)をゲット。それから『サンパン』最新号も入手。畠中さんから『雲のうえ』第7号をもらう。いつものことながら写真がいい。

洲之内徹文学集成

洲之内徹文学集成



 今日の目的を果たし、気分よく古本屋めぐりをする。田村書店の店頭均一台からこれを。

 「天文台日記」を読んで気になった天文学者のエッセイ集。「新・文學入門」の企画「気まぐれ日本文学全集」にも石田五郎巻が入っており、そこには《「天文台日記」未収録の天文エッセイ収録》とあるので、この「天文屋渡世」収録の文章からも何篇か入るんだろうな。それからこの巻には選者が決まっていないので、倉敷の蟲文庫店主・田中美穂さんにお願いしたらどうだろうと思う。



 ふらふらと歩いていると神保町交差点近くで恩師である曽根博義先生とばったり会う。『サンパン』のことなどを少し立ち話。「君も本が好きだねぇ」と先生はおっしゃるが、古書会館の展示即売会に行った帰りだという先生にそのお言葉をそっくりそのままお返し申し上げたい。お元気そうでなによりである。


 神田伯剌西爾でひと休み。早速「新・文學入門」を読む。何度もそのライブを聞いたことのあるテンポある掛け合いの面白さにグイグイ引き込まれてしまう。


 帰りの車中でも読み、途中床屋を挟んで、帰宅後も読み続け、気づけば270ページほど読み進んでいた。この本の装丁のすばらしさ、編集者のこだわりのすごさ、そして内容の面白さはすでに何人もの方がブログで詳細にお書きになっているのでいまさら言うべきこともないのだが、とにかく面白くて楽しい本だ。そして、読んでいる間なんとも言えず幸福感が己を満たしているのを感じさせてくれる本だ。


 本当はこの週末にやらねばならない持ち帰りの仕事があるのだが、「新・文學入門」を読み終わるまではなにも手につきそうにない。