往来堂から往来座へ。


 朝、起きると思いのほか強い雨音が聞こえてくる。やんでいてはくれなかったかと思いながら、支度をして家を出る。中公文庫のみ89冊を詰め込んだキャリーバッグをゴロゴロと言わせながら電車に乗り、千駄木に向かう。
 車内では「okatakeの日記」の影響で加藤千晶「おせっかいカレンダー」を聴きながら行く。


 千駄木駅に着き、地上に出るとまだ雨が降っている。またもゴロゴロと移動し、今日の会場である往来堂書店の前へ。すでに何名かの参加者の方が軒先で雨宿りをされていた。同じ場所に出店する北方人さんもいらっしゃる。


 その後、往来堂店長さんからの説明を受け、レジ係の当番とはこの置き場所を決めて11時にスタート。雨はまだあがっていないため、往来堂店頭のテントの下に身を寄せ合うようにして箱を並べる。僕はキャリーバッグをそのまま箱に見立てて横3列に肌色背表紙の中公文庫のみという“肌色文庫”を開店させる。
 開店してすぐに来た男性のお客さんが肌色文庫を3冊ほど買ってくださる。これは順調な滑り出しと思ったのだが、雨の休日という環境もあり、お客さんの出足が悪い。それでも、四谷書房さん、黒岩比佐子さん、工作舎石原さん、糸織さんといった顔見知りの方々のお姿も。また、南陀楼綾繁さん、オヨヨ書林さん、古書ほうろうさんがたぶん各賞の選考を兼ねて回られていた。


 雨であるということに加え、自分の箱が心配ということもあり、ほとんどの店主の方が往来堂内に留まっている。それも邪魔だろうし、また集中レジ方式になったありがたみがないと考えて、1時過ぎに往来堂を離れる。自分がレジを担当する2時45分まで昼食を兼ねて他の会場を覗くつもりなのだ。
 まず、古書ほうろうへ。僕が行った時にはまだ雨が残っていたため、箱は店内に入れられていたのだが、店を出る頃には雨がやんだため、箱を店の前に出し始めていた。
 次に初めて行くファーブル昆虫館へ。ここには岡崎武志堂が出店しているのだが、岡崎さんの姿は見られず。その後、旧安田邸を覗いてから結構人ミルクホールへ。久しぶりに行ったら以前よりガーリッシュな雰囲気に変わっていた。カフェオレとチーズケーキ。相変わらずここのチーズケーキはおいしい。ミルクホールを出て、近くの中華料理屋で昼食をとり、オヨヨ書林に向かう。店の前に箱が並んでいた。やはり気になる書肆紅屋さんの箱を覗く。佐々木基一「私のチェーホフ」(講談社文芸文庫)を選ぶ。また並んでいたBASARABOOSさんから里見弓享「初舞台 彼岸花」(講談社文芸文庫)を購入。後者は、武藤康史「文学鶴亀」の影響で。


 往来堂に戻ると北條さんとノンちゃんが来店。それぞれ肌色文庫を1冊ずつお買い上げいただく。ありがとうございました。雨もやみ、日も差してきた3時から4時までの1時間が一番お客さんも多く売り上げも多かったようである。“肌色文庫”もこの時間帯は結構売れていた。


 あっという間に4時になり、終了。結局40冊近くが売れる。お買い上げいただいた皆様ありがとうございました。


 今日は、外市も同日開催されているため、6時から始まる一箱打ち上げには残念ながら参加できず。往来堂に別れを告げて、池袋の往来座へまたゴロゴロと向かう。西日暮里駅に向かう途中の菊見せんべいで醤油せんべいを買い、外市へ。


 5時に往来座へ到着。早速、持ってきた中公文庫のスリップを伴健人商店に差し替え、棚に補充する。


 8時までの3時間を棚を覗いたり、レジ係をやったりしながら過ごす。今回のゲストである口笛文庫、聖智文庫ともにすごい。安過ぎですよ。


 外市で買った本は、往来座中市から校條剛「ぬけられますか 私漫画滝田ゆう」(河出書房新社)、古書現世から小林信彦「1960年代日記」(白夜書房)、聖智文庫から『spin03』(執筆者サイン本)の3冊。


 Y&Nさんの赤ちゃんが外市に登場。いやぁ、赤ちゃんてかわいいですね。こんなうちから古本の香り満ち満ちた空気を吸わせてしまっていいのでしょうか。お名前を聞くと、さすがに“わめ造”ではなかったですけどね。


 撤収の手伝いをしてから帰る。


 明日は仕事で行けないのだが、天気もいいようだし、いい本たくさんありますので、是非足をお運びください。



 *肌色文庫出品リスト*

「おじゃま虫」山本夏彦
「人生について」小林秀雄
「歩行文明」真鍋博
「拝啓マッカーサー元帥様」袖井林二郎
「他人の痛み」古山高麗雄
「大観伝」近藤啓太郎
「意地悪は死なず」 山本夏彦山本七平
「花篝」澤田ふじ子
追想 芥川龍之介」芥川文
「モンマルトルの空の月」中川一政
「野草の料理」甘粕幸子
「喪失」福田章二
「人形曼荼羅辻村ジュサブロー
「海辺の生と死」島尾ミホ
「倚松庵の夢」谷崎松子
「イヴァン雷帝アンリ・トロワイヤ
「たたずまいの研究」神吉拓郎
歌舞伎十八番戸板康二
「洋食や」茂出木心護
「混沌から創造へ」 武田泰淳
「熱球三十年」飛田穂洲
妙高の秋」島村利正
「江戸の夕栄」鹿島萬兵衛
「牛のあゆみ」奥村土牛
「金色の伝説」森三千代
青山二郎の話」宇野千代
デカダン作家行状記」柴田錬三郎
「知られざるフリーメーソン」スティーブ・ナイト
「にっぽん音吉漂流記」春名徹
「鉄砲を捨てた日本人」ノエル・ペリン
「鑑識捜査三十五年」岩田政義
「生きて行く私」宇野千代
「戦争童話集」野坂昭如
「終着駅」結城昌治
「女性に関する十二章」伊藤整
「妖花 ユウゼニカ物語」橘外男
好色一代男井原西鶴吉行淳之介(訳)
「海と薔薇と猫と」 加藤剛
「主体の変容」三浦雅士
「ロレンスを愛した女たち」中村佐喜子
「犯罪の大地」ニェズナンスキイ
「ミステリ散歩」各務三郎
「最後のロシア大公女マーリア」マーリア大公女
冬の花悠子」植草圭之助
マタハリ」M・グリッランディ
「日本人の知恵」多田道太郎
「たべもの嗜好学入門」河野友美
「雲か山か」牧野武夫
「自伝的女流文壇史」吉屋信子
「医の心」榊原仟
「笑わずに生きるなんて」赤塚不二夫
「生家へ」色川武大
「現世に謳う夢」大岡信
「やまとのふみくら」濱田泰三編
「味のぐるり」入江相政
「異文化圏遊泳」真鍋博
「アルファベット26講」谷川俊太郎
「新撰豆腐百珍」林春隆
「玩物草紙」澁澤龍彦
「文明開化の英語」 高梨健吉
「うちには猛犬がいる」中川一政
「水西書院の娘」宇野千代
「美味方丈記陳舜臣
「顔の本」香原志勢
「ココ・シャネルの星座」海野弘
「ナポレオン戦線従軍記」
「映画のおしゃべり箱」淀川長治
「西から東にかけて」平山郁夫
「玩草亭百花譜(上)」福永武彦
水滸伝宮崎市定
「怪僧ラスプーチン」M・グリッランディ
「食前食後」邱永漢
明治維新三大政治家」池辺三山
「叛骨の士道」奈良本辰也
「発想交差点」真鍋博
「森で暮らそう」木下威
「私の旧約聖書色川武大
占星術の世界」山内雅夫
ピカソはほんまに天才か」開高健
「ナポレオン一八一二年」ナイジェル・ニコルソン
赤露の人質日記」エリセーエフ
ジャンヌ・ダルク 」ジュール・ミシュレ
「世界の名車物語」 間宮達男
魯山人味道」北大路魯山人
「歴史はグルメ」荻昌弘
回転木馬はとまらない」富岡多恵子
「落語通談」野村無名庵
「神を信ぜず」岩川隆
「旅に拾った話」宮尾しげを