京阪旅行2

今日は大阪へ行く。
まずは阪急梅田駅地下街の古本の街から大阪第三ビル地下の古本街へ。
その後、colombo→BerlinBooks(休み)→貸本喫茶ちょうちょぼっこ→CaloBookshop&Cafeと回り、京都へと帰る。
南座近くの祇園書房へ寄る。普通の新刊書店なのだけどいい本屋です。オススメ。
夕食は餃子の王将で。詳細はまた帰ってから。



【追記】

朝起きて、窓から外を眺める。雨は降っていないようだ。ホテル近くのイノダコーヒーで朝食をとる。
支度を整え、ホテルを出て京都駅へ。JRの普通列車で大阪へ向かう。
大阪駅で下車し、地下道を通って阪急梅田駅を越え、その先にある阪急古書のまちに辿り着く。時間は11時。ちょうど古書のまちの開店時間になるところだ。一番奥の加藤京文堂から回り始める。
昨晩『エルマガジン』掲載の「天声善語」を読み、講談社文芸文庫の品切れが280余りになったことを知る。これを受けて山本善行さんは講談社文芸文庫の品切れ本で持っていないものにすかさずチェックを入れたことが書かれていた。赤線の引かれた目録を持って今日も山本さんは古本屋を回っているのではないかと思う。そんな気持ちが伝わったのか僕も講談社文芸文庫に目がいってしまう。

この本、あまり見かけない気がする。結局ここではこの1冊。初めてなのだが名前は聞いたことのある有名店もあり、買うというより目の保養をさせてもらったという感じ。
昼になったので、地下街にあった「ぶぶ亭」で明石焼きを食べる。明石焼きは初体験。卵のたくさん入った甘めの衣にタコが包まれていて、これをだし汁につけて食べる。上品なたこ焼きですかね。衣にだし汁が染みていってグズグズ感が出てきたところで食べるのがなんだか楽しい。しかし、8つも食べると飽きてくるので、半分はソースべったりのたこ焼きが食べたくなる。上品と下世話のバランスが大切です。
大阪の地下街は、こちらが慣れないせいもあるのだが、迷路のように入り組んでおり、そして果てしなくどこまでも続いていく感じがする。幾度も迷った末に、やっと北新地側の出口から地上に出られる。少し先にある大阪第3ビル地下にも古本屋が4、5軒並んでいる一角がある。ここを見て回るも、収穫なし。ただ漫画中心の店で永島慎二「フーテン」の単行本(2冊本)を見つけるが、その大きさやラップされていて中の状態が分からない(外側の状態はよくなかった)ため結局見送る。ちくま文庫で手に入れたいと思うが見当たらず。
ここからギアを昔ながらの古本屋から今風個性派古本屋へチェンジする。まずはcolomboを目指す。地下鉄御堂筋線に乗ったところで、このままでは大阪の本屋しか見ない一日になりそうな気配を感じ、せめて道頓堀くらい見ておこうと気が変わる。なんば駅まで行き、地上に出るとそこはあの道頓堀。かに道楽の看板が動いている(当たり前ですね)。芋を洗うように人がウヨウヨしている。5分で居たたまれなくなって駅へ戻る。人ごみは苦手。
本町駅まで戻って下車。心斎橋方面に歩いて行き、難波神社のすぐ裏手にcolomboがあった。古いビルの2階に入り口があり、中に入ると部屋の中に階段があり上にもうワンフロアある作り。下北沢にあるカフェ・オーディネールと作りが似ている。下のフロアは雑貨で上のフロアが古本。この店は数年前の『ブルータス』の本屋特集で存在をしり、ホームページなどをちょくちょく覗いていた店。雑誌の写真に写っていた店主の方がいた。古本フロアの椅子の上には黒白柄の猫が。古書現世のノラを思い出す。ただし、ノラよりは客が気になるらしく僕の方を視線でずっと追っているのが分かる。店主の方に聞くと雑種なのだが洋猫が入っているとのこと。きれいなうすいグリーンの目をしていた。店主の方と少し話す。昨日はこの方も下鴨に行っていたとのこと。昨日横浜から下鴨の古本市に来て、今日は大阪の古本屋を回っていると説明すると、「松浦さん(cowbooks店主)のお知り合いですか?」と聞かれる。どうやら同業者と思われたらしい。確かにわざわざお盆休みに京大阪に来て大きなトートバックを担いで古本屋を回っていたらそう思われても仕方がないか。横浜や東京の古本屋事情などの話を少し。ここではこの1冊。

池波正太郎作品集』(朝日新聞社)の解説をまとめた本。池波正太郎氏が跋を書いている。小振りで愛らしい本。こういうオシャレ系の店で買うのに向いている本だ。
御堂筋の反対側に渡り、Berlin Booksを目指す。途中でブックオフを見つけて入る。大阪のブックオフ入店記念で1冊。

先日、成瀬巳喜男監督の「めし」を観たばかりなので、舞台となった大阪で原作本を買う。これもまた楽しからずや。
Berlin Booksの入っている農林会館に着く。「チンキタ本バカ道中記」第2回(『早稲田古本村通信』76号)で、この店が取り上げられていたのを読んでぜひ行ってみようと思っていた店。農林会館というのがこれまた味のある古いビルで昭和モダンの香りがする。ところが、店の前まで来ると“お盆休み”の張り紙が。ガックリ。事前調査をしないからこういうことになる反省。「チンキタ」には、もう1軒、一色文庫が紹介されていたが、これも一度文章を読んだだけでプリントアウトをしてこなかったため、粗雑な記憶力では大阪のミナミにあるとしか思い出せず、こちらも断念(コピーしていった『エルマガジン』の地図には記載なし)。
気を取り直して、貸本喫茶ちょうちょぼっこへ。途中長堀通りを渡るのに地下道を使ったのが災いし、地上に出た時に方向感覚を失う。地図を片手に進むも、自分が地図上のどの位置にいるかが分からず、右往左往。半ばあきらめかけた時に目印となる北堀江病院を発見。それらしき地点に佇む。東京の下町あたりを彷彿とさせる建物の並びを目を凝らして見ているうちに階段に小さな看板のあるのを見つける。あったちょうちょぼっこだ。小雨もそぼ降る天気となり、これで休みだったらどうしようと不安がよぎる。狭くて急な階段を上ると、店に灯がともっている。よかった。
中に入ると常連らしきオジさんと大学生(男性)がいた。チャイを頼んで壁際のカウンターに腰掛ける。喉が渇いていたので、冷たいチャイがめっぽううまい。座ったカウンターには本が横一列にずらっと並ぶ。目の前に先日亡くなった杉浦日向子さんの「百日紅(上)」(ちくま文庫)が。手に取って1話分だけ読む。美しい女性の首の話。その隣りに谷口ジロー久住昌之孤独のグルメ」(扶桑社文庫)があったので手に取る。ページをめくると主人公・井之頭五郎が大阪でたこ焼きを食べているではないか。ホテルの前の屋台でやたら人懐っこい大阪人のノリにとまどいながら、熱いたこ焼きをハグハグしている。確かに大阪の人は人懐っこいような気がする。バス停で立っていると、「こんにちは」でも、「ご旅行ですか」でもなく、旧知の仲のようにいつの間にか話しかけられていて驚く。この店の常連と思われるオジさんも、後から来た女性2人に自ら進んで席を譲ると、譲らないとどういう不便が彼女達を襲うかを説明し出し、店番の方(共同経営の4人の方以外の女性のような気がしたのだが自信がない)に雨だから帰り道どのように気をつけなければいけないかを丁寧に説明した後、元気に挨拶して店を出て行った。
貸本ではなく売っている古本の棚から1冊。

地下鉄四つ橋線の四ッ橋駅から肥後橋駅に出て、少し歩くとCalo Bookshop & Cafeがある。こちらも古いビルの5階にあり、エレベーターのレトロ感がたまらない。緊急連絡用電話の受話器がすばらしいですよ。この店に行ったらぜひ見てください。
店内にはデザイナー系の人や美術系大学生といった客層が多いような。このお店がオープンする前に、その準備過程を店主の方がブログ日記で公開されていたのを読んでいたので、実際にその店に足を踏み入れた喜びを感じる。アイスコーヒーとブラウンケーキを注文する。ミニコミ関係も充実していてその中から『サンパン』1期・2期バックナンバーセットを購入する。
四つ橋線西梅田まで戻り、地下街を通って大阪駅へ戻る。行き帰り同じルートで帰るのもつまらないと思い返し、阪急線で帰ることにする。地下街を阪急電車方面へ向かうがまた迷う。そのうちに古本屋の前に出る。萬字屋書店だ。駅地下にある雰囲気は東京駅地下の八重洲古書センターに近いものがあるが、大きく異なるのは天井からいくつもぶら下がっているプロペラ型扇風機。これがすごい勢いでブンブン回っている。まるで、バンコクの食堂にでも行ったような錯覚を覚えてしまう。その雰囲気で満足。何も買わないで店を後にする。
阪急電車の特急に乗って終点京都河原町へ。駅を出ると鴨川の向こうに南座が見える。そうだ、この近くにおまささん(「密偵おまさの市中視回り日録」)のお友達がいるという祇園書房があるはずだと思い出し、行ってみる。佇まいは昔ながらの新刊書店なのだが、文庫の棚を見るとマメに文芸系の作品を揃えているのが分かる。マンガコーナーを見ても、作品を選んでいるのが伝わってくる棚作りだ。
恵文社一乗寺店ガケ書房などの派手さはないが、使い込んだ漆器が見せる地味な光沢のような輝きのあるお店。気に入りました。
ホテルに帰って、シャワー。着替えて夕食に繰り出す。
昨日はちょっとシャレた昭和モダンで攻めたので、今日は気分を変えて餃子の王将へ行くことにする。ホテルのロビーにあるパソコンで検索し、木屋町通りに河原町店があることを確認。夕闇迫る高瀬川沿いを歩く。夜の雰囲気が近づいてくると、呼び込みのお兄さん達のテンションも上がってくるらしく、ちょっと止まって王将の看板を探しているとしつこく声がかかる。それが嫌なので足早に歩いているうちに三条まで来てしまう。探している左の路地ではなく、右の路地に餃子の王将が。ただし三条店とある。どうやら、行き過ぎて次の店を見つけてしまったらしい。別の見方をすれば、京都にはそれくらい餃子の王将が多いということだろう。なぜわざわざ京都でここに入ろうとしたのかはグレゴリ青山「ナマの京都」(メディアファクトリー)をご参照ください。もちろん、興味のない方は無視してくださって結構です。
店に入り、餃子と酢豚。客層も料理も“庶民的”を絵に描いたよう。なんだか、ホッとする。
腹ごなしに鴨川のほとりを歩く。左手に鴨川と座ったカップル、右手に川床料理の物干台型座敷を見ながら京都の夜をしばし満喫。それにしても鴨川のカップルの座る位置というのはマークが付いているのかと思うくらい等間隔で並んでいる。間が大体5メートルくらいか。これはきっと長い時間をかけて幾多の男女が試行錯誤の末に生み出した隣りを気にせず2人の世界に没入できる距離なのだろうとちょっと感動する(するなよ)。
ホテルに戻って、明日の計画を立てる。明日で京阪旅行は最後。楽しまなくちゃ。