胸を張って歩く。

今日は昼で仕事が終わり、その後神保町へ繰り出すつもりだったのだが、アクシデントがあって4時過ぎまで職場に。それから慌てて神保町へ向かう。
まずは、書肆アクセスへ。今日の第一の目的はここで以下のものを購入することにあった。

濱田さん(正確には濱の字が異なります)の「脇役本」は、以前私家版を同じ書肆アクセスで手に入れているのだが、濱田さんのサイン入りで増補加筆されていると聞けばやはり欲しくなる。帰宅後、私家版と比べてみると、市販本が単なる増補などではなく、ほとんど別の本といっていいものであることが分かった。前者が185ページで67名の脇役を取り上げているのに対し、後者は339ページで58名と逆に減っている。そして、単に前者から9人減らしたのではなく、新しい人(例えば山形勳など)が入ったりもしている。共通して登場する加東大介を比較してみると、前者が見開き2ページ、後者は7ページと3倍近く記述が増えており、しかも趣旨は同じであるが、文章は全く別のものになっている。この事実を見ても、著者の濱田さんの本作りに対する真摯な姿勢と私家版を買った人を後悔させないようにしようという配慮が感じられる。両方買ってよかった。また私家版の終わりに載っている著者と藤田晋也氏との対談や著者自筆の脇役イラストは市販本には載っていないという違いもある。このイラストはいい味出してますね。今書店では、和田誠安西水丸両画伯競演の絵文集が並んでいるので、向こうを張って岡崎武志さんと濱田さんの競演で、イラスト&古本話の小冊子など出していただけると嬉しいのですが。
田中さんのものは15ページほどの小冊子。この秋、仙台のブックカフェ「火星の庭」でのイベント用に作られたものらしい。オマケに田中栞さん手作りの豆本(作り方が冊子に載っている)が付く。いつもながらに田中さんの精力的な活動振りは目を見張るものがある。女性の強さというものをしみじみと感じてしまう。「火星の庭」には、昨秋宮城県美術館に洲之内コレクションを観に行った時に、立ち寄ったことがある。ブックカフェと称しながら、本が驚くほど少ない店が多い中で、ここは本の量が多く、その内容も充実しているので一度で気に入ってしまった。カボチャを使ったデザートを食べたのだが、これまた美味であり、ブックもカフェも充実した店だった。また、行ってみたい。
この後、数軒古本屋を回って、コミガレへ行くが、時既に遅く閉鎖されていた。タテキンはやっているが、何も買えず。ただ、浴衣の若い男女が大判の本を何冊も脇に抱えていたのが珍しかった。知らぬ間に、浴衣で古本が夏のトレンドになっていたりして。そんなわけないか。
岩波ブックセンターも入り口前で扉を閉められる。やはり、今日はスタートが遅かったのだ、残念。
しょうがない、いつものように日本特価書籍によって〆ることにしよう。

「昭和初年のユリシーズ」は、あわよくばそろそろ古本屋の店頭に並んでいないかと思っていたのだが、本日回った店にはまだ置いていなかったので、1割引のこの店で購入。
小津安二郎と戦争」は、田中さんの小津安二郎ものをこれまでも楽しく読んできているので、楽しみにしていた1冊。それにしても、みすず書房の本を買うと、ちょっと贅沢をしたような気分になる。背筋を伸ばし、心持ち胸を張って歩きたくなるような感じ。
ユリイカ』は特集“雑誌の黄金時代”。多くのブログで触れられている坪内祐三さんと四方田犬彦さんの対談がまずは目当て。
帰宅して、坪内・四方田対談を読む。興味関心のある両氏の対談だけに面白く読了。四方田さんが携わっていた『GS』の話など、自分の大学生時代とバッチリ重なり、懐かしい。『GS』別冊として出た『リゾーム』なんて、当時の大学生の見栄の象徴のような1冊だったなあ。
坪内さんの編集者魂と四方田さんの雑食魂を堪能した対談だった。四方田さんのところに来た文芸誌編集者が「先生、最近韓国ブームですけど、韓国とか行かれたことはありますか?」と聞いたという話には思わず笑った。
【追記】
8月1日に「ウラゲツ☆ブログ」を覗いてみたら、僕が『GS』の別冊だと紹介した『リゾーム』は雑誌『エピステーメー』の朝日出版社から出た単行本(雑誌型の本)であることが分かったので訂正します。記憶とはこのように風化していくのですね。反省。