鉄っちゃんは罪悪なのか。

今日は、知り合いの結婚式でまた川崎へ。
式終了後、タクシーで地元に戻り、ラーメンを食べてから職場に向かう。
締め切りが近づいている仕事を抱えておりどうしても今日中にメドをつけなくてはならず、2次会の誘いを断り、休日出勤である。

職場には他にも2人ほど休日出勤の同僚がいたが、ひとり帰り、またひとりと気がつけば自分だけとなる。そこで、職場に来る前に買っておいたCDをかけながら仕事をする。ひとりで好きなジャンルの音楽を聴きながら仕事をするとこんなにもストレスが無いのかと思いつつ仕事を片付ける。明日になれば人が溢れかえる職場を思い、気分を重くしながら部屋の電気を落として帰途に着く。

今日は何も本を買わなかったので、昨日の話を少々。
昨日は、1日中忙しく、予定外の来客、面談、苦情の嵐を潜り抜けた後にはその日やるつもりの仕事をやり遂げる気力なく、職場を後にする(だから今日の出勤となるわけです)。帰り道に書店により1冊購入。

  • 山口瞳「酒食日記」(グルメ文庫)

この本は文庫オリジナルだが、もとになったのは角川春樹事務所から出ていたランティエ叢書の山口本とのこと。その親本に数本のエッセイが増補されている。親本は持っていないので、とりあえず買う。このグルメ文庫では以前に吉田健一氏のものを購入している。共通しているのは装丁のパッとしなさである。
角川書店時代に文庫本を「使い捨てのもの」と言い切った角川春樹氏の会社であるだけに、「品物としての文庫」に対するこだわりはまったく感じられない。「酒食日記」など嵐山光三郎氏の味のある解説もあり、いい本であるのだが、この「安物感」の横溢する姿には購買意欲をそそる要素はまったく見出せない。内容には見るべきものがあるだけに残念。

書店内を徘徊している時、雑誌売り場に若い父親と4、5歳の男の子がいた。男の子は熱心に『鉄道ジャーナル』に載っている電車の写真に見入っている。その時父親が大きな声で「**くん、もうダメだよ。そんなに見ていると鉄道オタクになっちゃうよ」と言った。すると、近くにいた母親も寄ってきて「**くん、鉄道オタクになったら大変だよ」とこれも大声で言う。男の子は大好きな電車の写真を見続けたくて「いやだ、いやだ」を繰り返している。両親はその後も「鉄道オタク」をまるで犯罪者のように言い募り、息子の翻意を促そうとしていた。これを聞いていて「鉄道ファン(マニア)」は、そんなに悪く言われなければいけない存在なのかと驚いた。僕は鉄道に格別の思い入れがある人間ではないが、友人や知り合いにかなり力の入った「鉄道マニア」が数人いる。しかし、彼らは概してとても優しく、いい人たちである。その点、先程の両親が心配するような触れるものすべてを薙ぎ倒す猛威を「鉄道への偏愛」がもたらすわけではないと思う。彼らから「鉄道」を取り上げてしまう方がどれほど人生を不幸にするか知れない。あの時、雑誌売り場の近くに「鉄っちゃん(鉄道マニア)」がいなかったことを願う。必要以上に彼らが傷つくことのないように。