装幀とジャケット

いつものごとく本屋によると、創刊された《ちくまプリマー新書》が平台に並んでいた。その中から2冊を選ぶ。

ちゃんと話すための敬語の本 (ちくまプリマー新書) 

内容への興味よりも著者への興味での選択となった。装幀はクラフト・エヴィング商會。一冊ずつ意匠を変えているのが素晴らしい。
先頃、講談社現代新書がデザインを一新してしまったため、ほぼ全ての大手出版社の新書が同一デザインを使用するものとなった。
現代新書の新デザインは一冊毎の色を変えているだけで意匠は同一である。この件については「web読書手帖」の1月27日のブログで触れられているが、以前のデザインを支持するその意見に同感である。現在、地元の書店では、杉浦康平の旧デザインと新デザインのものが棚の中で混在しており、その光景に何やら生理的嫌悪感に近いものを感じてしまう。新しいデザイナーの方は、講談社のPR誌で「モダン」ということを意識したというようなことを言っていたが、「モダン」がこのようなものであるなら随分つまらないもののように感じてしまう。先日も書いたが、山名文夫のデザインのようにモダンとは見るものを楽しませるものであってほしい。

プリマー新書に戻ろう。従来の新書が大学生から中高年を対象としているのに対して、この新書が中高生などの若い読者への“入門書”であることを意識する形で差別化を図っているためか、文字組みがゆるやかであると同時に通常の新書より紙が厚い。個人的にはこの紙の厚さ・硬さがちょっと気になる。

橋本治本の方を30ページほど読む。そこにはいつもの橋本氏独特のクネクネウネウネとした論理が展開されていて楽しい。姫野カオルコ「ほんとに『いい』と思ってる?」(角川文庫)には、作者が橋本氏の文章を読んで、その論理の見事さに泣く話が出てくるが、論理で泣かせるほうも、論理で泣くほうも両方すごい。僕にとっても橋本治氏の本は論理を楽しむための本なのだ。さすがに泣きはしないけど。