土曜日。久しぶりに半ドンで職場を出る。
あれこれ行きたい場所はあるのだが、この数週間はインフルエンザによる戦線離脱が許されぬ死のロードともいうべき日々が続くため、極力人ごみに行かない、電車に乗らないを心がけ、職場と本屋と自宅の往復のみの生活に限定している。もちろん、マスク装着は必須である。
それでも本屋には寄る。それが生きているということだから。
- 今尾恵介「地図の遊び方」(ちくま文庫)
- 『なごみ』2月号
- 作者: 今尾恵介
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「地図の遊び方」は『週刊文春』の坪内祐三「文庫本を狙え!」でとりあげられていたのを読んで興味を持った。
『なごみ』は初めて買った茶道雑誌。なんで買ったかといえば武藤良子画伯が平田俊子「気がかりな町」という連載エッセイのイラストを描いていることと、山口晃画伯が藤森照信教授と組んで「日本建築集中講義」を連載していることを知ったからだ。山口画伯のプロフィールを見て自分より年下であることに驚く。「すゞしろ日記」(羽鳥書店)に出てくる画伯の姿はまるで晩年の夏目漱石のようだから頭っから年上と思い込んできたのだ。
家に帰り、今日も東京クヮルテットを聴きながら読書。
- アーティスト: 東京クヮルテット,ベートーヴェン,ズッカーマン(ピンカス)
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- 作者: 田中美穂
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活字の大きさも行間もどこか田中さんを思わせるようなゆったりとした感じ。文章もいそがない。亀のように、日向に寝転ぶ猫のようにのんびりと。小山清、木山捷平、尾崎一雄、上林暁、永井龍男の本がある世界。足下の苔と空の星を眺める生活。
ストレスと疑心暗鬼と自己嫌悪ばかりの中で根拠のない楽観主義にすがりついてなんとか前に進む日々が続いている中でこの本はとても気持ちをほぐしてくれる。いい本だな。
まだ蟲文庫には一度もいっていない。何年も前から知っていて、ずうっと行ってみたいと思っていながらまだ行けていない。それは残念なことであり、また将来の楽しみを担保しているようないい気分でもある。田中さんも本の中で引用していた「女子の古本屋」の一節。
〈これから先、よほどのことがない限り、田中さんが蟲文庫をやめてしまうことは考えられない。なぜなら、蟲文庫は、田中さんそのもの、だからである。〉
だから、安心して蟲文庫への道を辿る将来の楽しみを取っておけるのだ。
今夜は早く寝よう。「キルトの家」を録画し、木皿泉脚本ラジオドラマ「LET IT PON!〜それでええんよ〜」(NHKFM)の予約録音もした。
明日もまた死のロードだ。