犬の生活。

休日の今日も出勤する。とは言っても朝から晩までというわけではないので、余り文句を言ってはいけないのだが。

家を出てバス停まで歩く。風が涼しく、空は晴れ渡り、なんとも気持ちがいい。歩きたいところであるが、時間がないのでバスに乗る。途中のバス停から乗車した年配の女性が僕の隣りの席に座った。すると強烈な化粧品の匂いが襲ってくる。思わず咳き込んでしまう。しばらく我慢していたのだが、くしゃみまで出そうな状態なので、匂いを拡散させるために、窓を開けて風を呼び込む。なんとか、ほっと息をつく。
それにしても、この方は自分の匂いにむせたりしないのだろうか。不思議でしょうがない。たぶん犬の世界というのはこんな強烈な匂いで構成されたものなのだろうな。そうでなければ、残った匂いを追っていくなんて芸当ができるはずないもの。

職場には休みだというのに仕事を抱えた同僚が数名いた。申し訳ないが、自分だけではないと言う安心感と喜びを感じてしまう。


仕事を終えて、午後2時過ぎに退勤。昨晩の談春ショックで落ち込んだ気持ちを盛り上げるために、午後のさわやかな陽光の中を歩いてブックオフへ行く。この陽気の中を行くべきところは他にあるだろうと思いはするが、行きたいものは行きたいのだからしょうがない。
まずは、モスバーガーに寄って腹ごしらえ。マスタードチキンのセットを食べる。挿んである野菜にかかっているソースがおいしい。


ブックオフの105円棚から3冊購入。

永井本は以前から欲しいと思っていたもの。
チェーホフイプセン」はチェーホフの翻訳が北條さんおすすめの神西清訳であったのと、亀倉雄策装幀の豪華クロース張りの姿が気に入ったため。
「名作集(三)昭和編」は収録されている作家と作品が文庫では気軽に読めそうもないシブいセレクションであるのに惹かれて。収録作家と作品は以下の通り。


十一谷義三郎「青草」
池谷信三郎「橋」
岡田三郎「三月変」
龍胆寺雄「放浪時代」
木村良夫「嵐に抗して」
神西清「垂水」
村山知義「白夜」
本庄陸男「白い壁」
北条民雄いのちの初夜
橋本英吉「欅の芽立ち」
鶴田知也コシャマイン記」
田畑修一郎「石ころ路」
石塚友二「松風」
中島敦「李陵」
網野菊「金の棺」
原民喜「夏の花」
田中英光「野狐」


マイナーというより何人かの作家は初めて聴く名前の人もいる。平野謙解説なので、平野氏のセレクトなのかな。


地元に戻り、本屋で。

  • 『東京人』6月号

特集“マニアが教える 東京ヴィンテージショップ”ではなく、“「イベント型」古本市が本の世界を変える!?”という南陀楼綾繁さんの文章と川本三郎×諸田玲子「小説に描かれた、昭和の荻窪風景」という対談が目当て。


帰宅後、借りていたDVDで「パッチギ!」を観る。評判通りの傑作。主人公の松山康介(塩谷瞬)を除くほとんどの出演者に個性的な顔の持ち主が揃っている。キョンジャ(沢尻エリカ)やガンジャ真木よう子)も在日朝鮮人としての存在感をうまく演じていた。映画の常套句をうまく活用し、理屈説明に流れず、ハッピーエンドに終わるこの作品は映画を観る喜びを感じさせてくれる。


久世光彦「百閒先生月を踏む」の続きを少し読む。BGMはサラサーテ演奏の「ツィゴイネルワイゼン」。数年前渋谷で行われた鈴木清順監督のトリビュート企画“DEEP SEIJUN”で「ツィゴイネルワイゼン」・「陽炎座」・「夢二」の浪漫三部作を観た時に会場で購入した「DEEP SEIJUN」という企画アルバムに収録されているもの。三部作の音楽を担当した河内紀さんがこのCDの音楽監督をしている。
映画「ツィゴイネルワイゼン」は内田百閒「サラサーテの盤」を原作としたもの。大好きな作品のひとつだ。「百閒先生月を踏む」はその「サラサーテの盤」に関わる作品ということなので、今後の展開が楽しみ。ただし、未完の遺作なので、その部分がどこまで描かれているかは未知数なのだが。


林哲夫さんの「東京遅日日記」で坪内祐三さんが『CABIN』8号所収の杉本秀太郎「富士の裾野」を《「ここ一年、いや、五年間でベストだ、随筆の力を再認識させてくれた」と褒めちぎる。》とあるのを読んで興味を持つ。早速目を通す。なるほど、味わい深い文章だな。へんに整頓されていないのがいい。林さんは『考える人』2006年春号に載った杉本さんの文章(「京都夢幻記」)もいいと「daily-sumus」で書いているので、こちらもそのうちに読んでみようと思う。これまで杉本さんの本や文章にはあまり関心を持っていなかったが、今後はチェックしていかなくては。


今日は読了、新刊購入ともになし。

【購入できる新刊数=2】