ダブりナーズを求めて。

 

 

 

 今年も誕生日が来た。たまたまその日が人事発表と重なった。配られた人員配置図を見てこれまでどうにか乗り越えてきた3年とこれからもまた続く不安と自己嫌悪の3年を思いながら聞こえないため息をついた。

 

 退勤時間を待って職場を出る。本屋へ。3冊購入。

 

・『本の雑誌』4月号

・野口実「源氏の血脈 武家の棟梁への道」(講談社学術文庫

金田一京助「日本の敬語」(講談社学術文庫

 

 

「源氏の血脈」は大河ドラマ「鎌倉殿の13人」の影響による。先日呉座勇一「頼朝と義時」(講談社現代新書)を読み、今は松村邦洋松村邦洋『鎌倉殿の13人』を語る」(プレジデント社)をつまみ読みしている。これから1年通して鎌倉幕府ものをちょこちょこと読んでいこうと思っている。

 

 

 気が滅入ることが多いので,気分転換に駅ビルで高級なチーズケーキを買って帰る。ベーコンとしめじと白滝を炒め煮たものとポテトサラダの夕食をとり、昨日買ってきた深炒りのブレンド豆を挽いてコーヒーを入れ、買ってきたチーズケーキを6分の1ほど切って誕生日祝いのケーキのつもりで食べる。深炒りのコーヒーと甘みのきつくないチーズケーキが丁度いい感じ。

 

 

 この豆は東横線の白楽にあるテラコーヒーという自家焙煎の店で昨日買ったもの。昨日は仕事が休みだったので久しぶりに東横線で本屋巡りをした。

 

 綱島駅近くにあるブックオフから本屋巡りをスタート。この店に来るのは1年ぶりくらいか。

 

 110円棚から2冊。

 

小林恭二「俳句という遊び」(岩波新書

小林恭二「俳句という愉しみ」(岩波新書

 

 

 この2冊は新刊、古本含めて何冊も買っている。先日、若い知人に手持ちのものをあげたので補充しておく。また、最近職場の出版物に俳句について文章を書く機会があり,文章の最後に句会の面白いドキュメンタリーとしてこの2冊を挙げておいた。

 

 

 通常棚から1冊。

 

阿部公彦「モダンの近似値」(松柏社

 

 

 阿部公彦本は結構持っているのだがこれは未所持。漱石ジェーン・オースティンについて触れている文章があるので買っておく。

 

 

 東横線を乗り進め、妙蓮寺へ。駅の近くの石堂書店に入る。以前に来たときも感じたが昔ながら街の本屋とセレクトショップ系本屋が違和感なく前者よりに融合している店。このような店が続いている妙連寺という街が好ましく思えてくる。以前は線路の反対側に普賢堂といういい古本屋があってその店に行くために妙蓮寺で下車していたが、普賢堂が移転してしまってからは足が遠のいていた。石堂書店の向かいには本屋・生活綴方があるのだが残念ながらしまっていた(あとで水曜日は定休日であると知った)。

 

 石堂書店で1冊。

 

堀江敏幸「オールドレンズの神のもとで」(文春文庫)

 

 

 この後白楽の古本屋を回る予定で妙蓮寺駅に向かおうとしたが、天気がよく気温も上がってきたので白楽まで歩くことにする。なだらかな起伏のある道を日射しを浴びながら歩くのは春を感じられて気持ちがいい。道沿いに個人経営の店(飲食店の割合が多い)が点在していてそのような店が存続している街であることにまた好感を抱く。白楽の駅を過ぎ、古書鉄塔書院に入る。この店は来る度にまだそこにあることを嬉しく感じさせてくれる。沿線の各駅近くにこのような古本屋が1軒ずつあってくれればどれだけ人生に潤いを与えてくれることかと思う。いい本が多いのだが、今回は未所持でほしい本がなかったので買わずに出る。

 

 六角橋商店街を過ぎ、交差点を渡って高石書店へ行ってみるが入っている建物全体のメンテナンス中らしくシャッターが閉まっていた。気を取り直して神奈川大学方面に進み相原書店に行ってみるがここもシャッターが下りていた。

 

 六角橋商店街を戻り、白楽駅を過ぎたところにあるツイードブックスへ。こちらも来る度に本の品揃えに感心する。鉄塔書院とこの店があるだけでも白楽という街は僕にとって魅力的な街だ。こちらで2冊。

 

・金井嘉彦 道木一弘編著「ジョイスの迷宮 『若き日の芸術家の肖像』に嵌まる方法」(言叢社

小田光雄「古本屋散策」(論創社

 

ジョイスの迷宮(ラビリンス): 『若き日の芸術家の肖像』に嵌る方法 (ジャパニーズ・ジェイムズ・ジョイス・スタディーズ)
 

 

ジョイスの挑戦──『ユリシーズ』に嵌る方法 (JJJS(Japanese James Joyce Studies))
 

 

ジョイスの罠―『ダブリナーズ』に嵌る方法: 『ダブリナーズ』に嵌る方法

 

 

 

 「ジョイスの迷宮」は、このシリーズの最新刊「ジョイスの挑戦 『ユリシーズ』に嵌まる方法」を購入したばかりだったのでこちらも手もとに置いておきたくて購入。このシリーズには「ジョイスの罠 『ダブリナーズ』に嵌まる方法」もあるのでこちらもいづれ手に入れたい。今年は「ユリシーズ」出版100周年に当たるとのことで「ユリシーズ」に関わるオンラインイベントなども実施されており、この機会に自分も「ユリシーズ」を通読してみようと思って1章ずつ集英社文庫丸谷才一他訳と柳瀬尚紀訳を読み比べながら進めている(といってもまだ2章までだが)。

 

 

 ツイードブックスを出て白楽駅まで戻る途中にテラコーヒーがある。そこで中炒り・深炒り2種類のブレンド豆を買って電車に乗って帰った。

 

 

 今夜は誕生日の夜ではあるが、これからの仕事のことを考えると気分はあまりすぐれない。辛い日々が待っているのがわかっているから。そのためにどのように日々の生活に楽しみを作り出していくかが重要になってくる。生きていくことを自分で肯定できる状況を自分自身で作り出さないとただ苦しいだけの生活になってしまう。そのための方途のひとつとして神保町のすずらん通りに開店したPASSAGEという共同書店の一棚店主となることにした。3月1日から自分の蔵書から選んで送った本が棚に並んでいる。店の場所が大好きだった書肆アクセスのあった場所の近くなので、自分の中にあるアクセスに並んでいたような本を並べられたらと思っている。そんな目で部屋の本の山からダブり本を中心に選んだ。もちろん、自分の持っている本をすべて売り物として並べるわけにはいかないため、仕入れもかねて古本屋を回って本を買うということを積極的に行っていくことになる。つまり、古本屋で本を買うための大義名分を手に入れたというわけだ。実は昨日の古本屋巡りでもダブり本を積極的に買っている。仕入れのためだと自分に言えば持っている本をまた買うことにも躊躇はいらない。コロナ禍ということもあり、自重していた古本屋巡りを積極的におこなっていこうと思う。それが生きる力になればあとどれくらい続くか分からない残りの人生をなんとかやっていけそうな気がする。