ロスとロスト。

 昨晩は、ポストに届いていた『BOOK5』の最終号となる“特集 年末恒例アンケート 今年の収穫”を楽しんだ。この季節になると色々な雑誌・新聞等でこの手のアンケートが花盛りとなるが、sumus同人の方々だけでなく、ヨムネル(yomunel)・塩山芳明東川端参丁目・北村知之といった皆さんの名前が並ぶのはこの『BOOK5』だけだろう。なんともうれしいプレゼントだ。


 yomunelの表記で頭に刻まれているので最初“ヨムネル”って誰?と思ったが、アンケートの最初の一文を読んで、このアプローチの仕方は間違いない、あのyomunelさんだとニンマリする。こちらの期待の地平を裏切らないその後の展開にもウンウン頷きながら、いい仕事してますねぇと納得。
 塩山さんのアンケートが僕にとっての白眉の一編。この屈折した直球の評は塩山さんにしか投げられませんよ。「森卓也のコラム・クロニクル」を買ってよかったと思わせてくれます。
 東川端さんの「逃げるは恥だが役に立つ」と北村さんの昼休みに食べるパンはアンケートの中心ではなく周縁だが、その周縁がおいしいのだ。


 ついでに前年のアンケート特集(19号)も引っ張り出して眺める。去年の一番人気は岸政彦「断片的なものの社会学」。僕もこれを読んでそのしなやかな強さにポワンとしてしまったことを思い出す。そして今年は栗原康「村に火をつけ、白痴になれ」。これも今から読むのが楽しみだ。



断片的なものの社会学

断片的なものの社会学

村に火をつけ,白痴になれ――伊藤野枝伝

村に火をつけ,白痴になれ――伊藤野枝伝




 『BOOK5』はこれで終了ということだが、年に一度このアンケート号だけ別の形でもいいから出して欲しいと思う。



BOOK5 22号 特集:年末恒例アンケート 今年の収穫

BOOK5 22号 特集:年末恒例アンケート 今年の収穫


 その後、TVで「逃げるは恥だが役に立つ」の最終回を視聴。途中の「真田丸」パロディに「真田丸」ロス状態の心が躍ってしまう。ミーハーな体質のため、「逃げ恥」ロスも加えて床に着くことになった。




 今日は、職場ではなく出張場所に直接行くため部屋で朝食をとる。パンをトーストし、ハムエッグを作り、昨日コンビニで買ったごぼうサラダを添えて食べる。


 午前中は武蔵小杉周辺で野外仕事。師走と思えぬ暖かな陽射しがうれしい。昼前に上がり、午後の出張場所へと向かう。


 乗り換え駅の神保町で下車。まだ、出張先の会議が始まるまで1時間以上あり、しかも場所はここから駅で2つとなれば、慌てることはない。比較的空いていたキッチンジローでハンバーグとチキンカツの盛り合わせの昼食をとり、東京堂三省堂を回って数冊買い込む。

唐獅子株式会社 (小林信彦コレクション)

唐獅子株式会社 (小林信彦コレクション)



 “特集・こうの史代”は、明日ようやく仕事帰りに映画「この世界の片隅に」を観に行けることになったため、鑑賞後の楽しみに買っておく。

 “『シン・ゴジラ』とはなにか”は、『ユリイカ』を毎号並べている地元の書店にいつまでたっても入らないので、辛抱たまらずこちらで購入。

 「唐獅子株式会社」は「極東セレナーデ」に続く、フリースタイルの小林信彦コレクションの第2弾。予定より遅れてやっと出ました、買いました。これまで親本、新潮文庫版と読み継いで来たが、唐獅子シリーズが1冊本としてまとめられたのはこれが初めて。


 時間があまりないので、三省堂の隣の上島珈琲店に入ってコーヒーを飲みながら「唐獅子株式会社」をちょっと読む。冒頭、出所した“不死身の哲”こと黒田哲夫が、自分の所属する二階堂組の変貌に驚く様子が描かれるのだが、これがうまい。これから須磨組の大親分の勝手気儘のハチャメチャ振りに翻弄されて行くことになる哲を取り囲む状況が寸分の無駄もない会話の連続で読者の目の前に次々と現れてくる。味わい深いのにサクサク読める。小林信彦という作家にしか書けない良質の仕事。おかげで初めて飲んだ上島珈琲店ブレンドの味を全く覚えていない。


 2時から始まった会議は1時間半ほどで終了。本日の業務はここまで。


 もう一度乗り換え駅の神保町で下車し、今度は本屋ではなくレコード屋へ。


 お馴染みの名盤たちをお手頃価格で手に入れる。


 帰りの車内では先程買った「唐獅子株式会社」の続きを読む。インテリやくざの原田、元プロレスラーのダーク荒巻、生臭坊主の学然など懐かしいメンバーと楽しく再会しているうちに駅に着く。慌てて降りて地元の本屋を流している時に手にディスクユニオンの袋を持っていないことに気づく。電車の網棚の上に置いたまま忘れて来たのだ。急いで駅の窓口へ。あれこれあってその荷物は武蔵小杉の駅に届いているとわかる。もう一度武蔵小杉へ。無事入手。




 帰宅して、夕食をとり、買って来たレコードをペプシスペシャルゼロを飲みながら聴く。コーラを飲むたびに正面のテレビに立てかけてある「スプリット・キック」の瓶のミルクを飲むゲッツと目が合ってしまう。その黄色いジャケットを見ていると、ダンディ坂野のギャグ、“ゲッツ”と黄色いスーツの衣装はこのレコードからきているのではないかという妄想が湧いてくる。いかんな、どうも疲れているようだ。



スタン・ゲッツ・オン・ルースト Vol.2