海なくて舟が残る。


 久しぶりの休日。気がついたら10時まで寝ていた。


 起きるタイミングを見計らっていたようにドアチャイムが鳴る。


 仕事の関係等で再配達を依頼していた荷物が届いたのだ。荷物は古書現世の目録「逍遥」で注文したもの。今回は頼んだ4点すべてが当たっていた。たぶんこんなことは初めてだ。


 『古本共和国』は『sumus』メンバーによる空想の本屋&古書目録が載っているもの。これが読みたかった。「カバン堂」(林哲夫)、「古書トキワ荘」(岡崎武志)、「古書ホンノオマケ」(生田誠)、「古書空母艦シナノ」(荻原魚雷)、「古書三十歳」(扉野良人)、「スクラップブック・ショップ 票面帖力」(南陀楼綾繁)、「温泉書店」(山本善行)など。


 最後の「評説牧野信一」は大学時代にお世話になった恩師の主著。残念ながら院生時代に亡くなってしまった。学生時代には古書価も高く手がでなかったが、今回は函なし裸本のため比較的安く手に入れることができた。


 恩師は若き日には小説も書いていた無頼派の生き残りのような人だった。飲むと女子学生に「僕とフランスへ逃げよう」と冗談めかして言うような(えり好みをせず、女の子全員にちゃんと言っていたのを偉いなあと思って聞いていたことを思い出す)ユーモラスな一面と周囲がどうしてよいか分からなくなるほどの暗い自己否定を示す一面とがあって、後者はどうやら戦時中の兵隊としての記憶からくるものであったと人づてに知らされた。戦後生まれで父親も戦争に行っていない世代である僕にとって恩師の姿はぼんやりとではあるが戦争というものが1980年代にも地続きとしてあることを教えてくれた。



 届いた本の代金を振り込みに街に出る。


 本屋にも寄る。


舟を編む

舟を編む

SWITCH Vol.30 No.1 特集:僕らのバイブル

SWITCH Vol.30 No.1 特集:僕らのバイブル


 前者は辞書編集部の編集者たちを描いた小説と聞いて読みたくなった。そう言えば、井上ひさしが休刊直前の文芸雑誌『海』だったか、その後に出た『中央公論文芸特集』だったかに辞書編集者を主人公にした作品を連載していたことを思い出す。主人公の名前をタイトルにしたもので(名字に「花」が付いたと思うが忘れてしまった)、数回で中断してしまったと思う。まとまった作品として読んでみたかった井上作品だった。


 後者は読書特集。立川談春師匠が「博打から“世界”を知る3冊」を選んでおり、その1冊に樋口修吉「銀座ラプソディ」があり、確かこれはブックオフで見つけて持っていたはず。ちょっと探してみよう。



 帰宅して今夜もふぬけのようにぼんやりテレビを流しながら過ごす。


 思い立ってここ何日かの日記を書いた。