図書館の狐。

 今日は仕事が休み。しかし、家でやらねばならない机仕事があるため、のそのそと午前中から机の前に座る。


 いつものことなのだが、なかなか仕事に集中できず、資料をあれこれと眺めるだけで時間が過ぎる。


 午後に気晴らしに近所のブックオフへ行く。105円の文庫棚を流していたら店員のおねえさんが熱心に棚指しをしている。それではと単行本や雑誌の棚を見てから戻って来てみると、中公文庫や旺文社文庫が追加されているではないか。


 このほか講談社文芸文庫を2冊や野坂昭如「東京十二契」(文春文庫)などを購入。野坂本は作者が過ごした東京の町を再訪した〈極私的東京センチメンタル・ジャーニー〉。つまり野坂版「私説東京繁盛記」だ。先日買った坪内祐三「東京」と読み比べてみると面白そう。


 買い込んだ本をバッグに入れて背中に背負い、急で長い坂を上って行く。暑い盛りにこの坂はきつい。しかも薪を本に代えて背負った二宮金次郎のような状態で。まあ、本を読みながらではなくiPodで音楽を聴きながらではあるけど。


 帰宅後、コンビニで買った昼食をとりながら『週刊文春』を読む。坪内祐三文庫本を狙え!」は広瀬正「マイナス・ゼロ」(集英社文庫)をとりあげている。やはり、〈戦前の世田谷と銀座を中心とした東京小説の傑作〉として評価している。それから、最後に付け加えられた〈恋愛小説としても素晴らしい〉に、そうだろうとうなづく。


 机に向かうが仕事は進まず。手近にあった小林信彦オヨヨ大統領の悪夢」(角川文庫)から「第一部 不眠戦争」を読む。8月15日の終戦記念日の出来事を中心としたこの短篇は僕にとっての夏のマストアイテムなのだ。


 結局海外出張で途中になっていた山村修「もっと、狐の書評」(ちくま文庫)の続きを読み終える。「狐書評全集」が刊行され、読書の案内役としてすべての図書館の棚に常備されるべきであろうと思う。とくにこの狐は図書館と相性がいいのだから。